この2,3週間読んでいた小説(ボーイスカウトの先輩からの紹介)から、いくつかを引用しておきます。小栗上野介とは、幕末に勘定奉行・外国奉行・軍艦奉行を歴任し、アメリカとの交渉をしたり、横須賀製鉄所の建設、日本発の株式会社の設立、郡県制の提案などをされた人です。
■小説 小栗上野介—日本の近代化を仕掛けた男
世界には有道の国と無道の国がある。有道の国とは、「仁と徳をもって国民に政治を行う存在」であり、無道の国とは、「自己権力の拡張のために、権謀術策をもって政治を行う存在」である。
「日本人の行動をみていると、申し分のない正しい礼節の要素を備え、傲慢、でしゃばり、尊大などの態度は絶無だ。社交場においては、時として苦痛を感じたり、あるいは胸の中でイライラすることもたくさんあったに違いない。が、日本人には強い忍耐力がある。胸の中に深くこれをかくして、絶対にそういう感情を顔色にあらわすことはしない。かれらはいつも機嫌よく、内から発する心の光が柔和で温かな顔に輝いて、文明をもって誇る西洋の知識階級に見られるような表面的な憂い、疲れ、不平などの表情とはまったく正反対な様子をみせている。これは、知的優位に立って、精神的文化を持っていると思い込んでいる我々が、この平和の内心の満足の秘密を、非キリスト教徒的国民から学ばざるを得ない。彼らには外からかれらを拘束する法則はない。自ら自分を拘束する法則があるだけだ。かれらは常に人と接する時に、明るい態度をもってし、また規律を守ることは厳にして私事や楽しみ事と、国家が命じた政治上の公事との間に厳然たる区別を立てている。絶対にそれを犯すことはない。」
「民に対してはよらしむべし、知らしむべからず(孔子)」これは、国民は政治家に従わせておけば良い、何も知らせる必要はないという意味ではあるが、その裏には、国民に心配をかけるような政治はするなという意味である。
幕末の日本人は美しかったんですね。